「うちは何でも作れます」をやめた日 Vol.6

AIが変え始めたのは、現場だけではなかった。
価格で選ばれる会社から、「相談したい会社」へ。
岡田テックの営業が、少しずつ変わり始める。


年商29億円、社員45名の製造業・岡田テック。

AI導入2年目。
若手社員が改善提案を出し始め、ベテラン社員の経験がAIを使って整理され、会社の空気は少しずつ変わり始めていました。

しかし、岡田信三には、まだ一つ大きな悩みが残っていました。

「忙しいのに、なぜ利益が残らないのか」

工場は毎日動いている。
社員も頑張っている。
仕事もある。

それなのに、気づけば利益が薄い仕事ばかり増えている。

「うちは何でも作れます」

長年、その言葉で営業してきました。

だが太一とAI導入コンサルタントの西尾は、その言葉こそが、会社を価格競争に巻き込んでいる原因だと言い始めます。

この第6話では、AIを使って顧客ごとの困りごとを整理し、「安く作る会社」から「相談される会社」へ変わっていく岡田テックの営業改革を描きます。


目次

「忙しいのに利益が残らない」

ある日の夕方だった。

信三は事務所で試算表を見ていた。

売上は悪くない。

むしろ、以前より受注量は増えている。

だが、利益が思ったほど残っていない。

材料費。
人件費。
配送費。
外注費。
電気代。

全部が少しずつ上がっている。

その一方で、取引先からはこう言われる。

「もう少し安くならないですか」

「他社はもっと早いですよ」

「急ぎなんで、なんとかお願いします」

信三は、机に試算表を置いた。

「こんなに忙しいのに、なんでこんなに利益が薄いんだ……」

その時、太一が事務所へ入ってきた。

「おやじ、まだいたの?」

信三はため息をついた。

「忙しい割に利益が残らん」

太一は試算表を見た。

少し黙ってから言った。

「安い仕事が増えてるからだと思う」

信三は眉をひそめた。

「仕事があるだけありがたいだろう」

太一は静かに答えた。

「でも、“何でもやります”って言い続けると、価格で選ばれるようになる」

信三は腕を組んだ。

岡田テックは昔からそうだった。

短納期。
急ぎ対応。
細かい加工。
他社が嫌がる仕事。

「困ったら岡田テック」

そう言われるのが誇りだった。

しかし最近、その“困ったら”の内容が変わってきていた。

無理な短納期。
利益の薄い追加工。
値下げ前提の見積。
急ぎばかりの案件。

現場は疲弊していた。

それでも断れない。

断れば、次の仕事が来なくなるかもしれない。

信三は、その不安をずっと抱えていた。

「うちは何でも作れます」が価格競争を呼んでいた

翌週。

太一と西尾は、営業の受注履歴をAIで整理していた。

過去3年分の見積。
受注単価。
納期。
利益率。
クレーム履歴。
追加対応。
値引き率。

それらをAIで分類し始めた。

信三は、最初は半信半疑だった。

「そんなもん見て、何が分かるんだ」

西尾は答えた。

「社長、“儲かっている仕事”と“忙しいだけの仕事”を分けて見ていますか?」

信三は黙った。

正直、感覚でしか見ていなかった。

忙しい仕事は大事。
取引先を切らさないことが大事。
頼まれたら断らない。

それが営業だと思っていた。

しかしAIで整理してみると、意外なことが見えてきた。

利益率が高い案件には共通点があった。

・納期に余裕がある
・技術相談から入っている
・試作品から量産につながっている
・他社では難しい加工が含まれている
・顧客が「安さ」より「安心」を求めている

逆に、利益が薄い案件にも共通点があった。

・急ぎ対応ばかり
・価格比較されている
・図面だけ送られてくる
・加工内容が単純
・「とりあえず見積ください」で始まる

西尾が言った。

「社長、岡田テックさんは、“技術で選ばれる仕事”は利益が残っています」

太一もうなずいた。

「でも、“何でもやります”で受けた仕事は、価格競争に巻き込まれてる」

信三は、少し黙った。

昔は、それでもよかった。

仕事があるだけありがたい時代だった。

だが今は違う。

人も足りない。
ベテランも減る。
設備投資も必要。
若手教育もしなければならない。

全部を安く受けていたら、会社が持たない。

AIが整理した「お客様の本当の困りごと」

西尾はさらに、営業メモやクレーム履歴もAIで整理した。

すると、別のことが見えてきた。

お客様は、単純に「安い会社」を探しているわけではなかった。

本当に困っていたのは、別のところだった。

「急ぎ対応できる会社がない」

「図面変更に柔軟に対応してほしい」

「品質が安定しない」

「相談しながら進めたい」

「担当者によって話が変わる」

「量産前の試作段階で相談したい」

つまり、お客様が欲しかったのは、“安い加工”ではなかった。

「安心して相談できる製造パートナー」だった。

太一は言った。

「おやじ、うちは“何でも作れる会社”じゃなくて、“困った時に相談できる会社”を目指した方がいい」

信三は、少し考え込んだ。

確かに、利益が残っている案件は、最初から図面だけで始まっていなかった。

「こういう部品って作れますか?」

「今のやり方だと不良が出るんです」

「他社で断られて困っていて」

そんな相談から始まる案件ほど、長く続いていた。

そして、単価も安売りになりにくかった。

営業の言葉を変えた太一

翌月。

太一は営業メンバーを集めて言った。

「これから、“うちは何でも作れます”って言うのをやめます」

営業担当が驚いた。

「え?」

太一は続けた。

「代わりに、“御社の困りごとを一緒に整理します”って言います」

信三も横で聞いていた。

正直、最初は不安だった。

そんな言い方で仕事が取れるのか。

しかし太一は、営業トークを少しずつ変えていった。

以前。

「短納期もできます」

「安くできます」

「何でもできます」

今。

「今、一番困っているのはどこですか?」

「納期ですか?品質ですか?人手ですか?」

「今の工程で、どこが止まりやすいですか?」

「その問題、加工方法から変えた方がいいかもしれません」

営業が、“受注を取る人”から、“問題を整理する人”に変わり始めた。

そして、その会話をAIで整理し始めた。

顧客ごとの悩み。
よく出る相談。
業界ごとの課題。
試作段階の不安。
量産時の問題。

これらを蓄積し、営業提案に活かし始めた。

「価格」ではなく「信頼」で選ばれる会社へ

半年後。

岡田テックには、少しずつ変化が出始めた。

以前より、試作相談が増えた。

「他社で断られた案件なんですが」

「まだ図面が固まっていないんですが」

「量産前に相談したくて」

そういう問い合わせが増えた。

信三は驚いた。

以前なら、完成図面が来て、価格比較されることが多かった。

しかし今は、“相談段階”で声がかかるようになっていた。

しかも、そういう案件ほど利益率が高かった。

太一は言った。

「おやじ、価格競争って、“どこでも同じ”と思われた時に起きるんだよ」

信三は黙って聞いていた。

「でも、“この会社に相談したい”になると、比較されにくくなる」

西尾もうなずいた。

「AIは、その“相談される会社”になるために使えるんです」

信三は、少しずつ分かってきていた。

AIとは、文章を作る道具ではない。

会社の強みを整理し、顧客の困りごとを見えるようにし、“選ばれる理由”を作る道具にもなるのだ。

製造業のAI導入で営業が変わる理由

多くの製造業では、AI導入というと現場改善ばかりをイメージします。

しかし、本当に利益を変えるのは、営業と顧客管理の変化です。

AIを使うことで、

・どの案件が利益を残しているのか
・どの顧客が長く続いているのか
・どんな相談から高単価案件につながるのか
・どんな仕事が現場を疲弊させるのか

これらが見えるようになります。

すると、営業の言葉が変わります。

「何でもできます」ではなく、

「どこに困っていますか?」

と聞けるようになる。

これが、価格競争から抜け出す入口です。

岡田テックは、まだ大企業ではありません。

しかし、少しずつ変わり始めていました。

安い仕事を追いかける会社から、
相談される会社へ。

そして信三も、少しずつ思い始めていました。

AIは、人を減らすためのものではない。

会社の強みを、もっと伝わる形に変えるためのものなのかもしれない。

次回。

岡田テックに、ある大きな案件相談が入ります。

しかし、その案件には大手企業との競争が待っていました。

「価格では勝てない」

そう感じた時、太一はAIを使って“ある提案”を作ります。

それは、部品の提案ではありませんでした。

お客様の“未来の困りごと”を先回りする提案でした。

この記事で分かること

・製造業が価格競争から抜け出せない理由
・AIで顧客の困りごとを整理する方法
・「何でもできます営業」が危険な理由
・高単価案件を増やす営業の考え方
・製造業のAI活用を営業に広げる方法

AI導入・AI講座のご案内

岡田テックの物語は、特別な会社だけの話ではありません。

年商10億円を超える製造業でも、次のような課題を抱えている会社は少なくありません。

・価格競争から抜け出せない
・利益が薄い仕事ばかり増える
・営業が「何でもできます」になっている
・顧客の困りごとを整理できていない
・AIを導入したいが、営業にどう活かせばいいか分からない
・社員にAIを使わせたいが、現場で定着しない

株式会社アップオンコンサルティングでは、お客様の会社向けに、AI導入とAI活用を実務で進めるための講座・支援を行っています。

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AIを初めて使う従業員の方でも、基本操作から実務活用まで学べる講座です。
最終的には、簡単なAIアプリ作成まで進めることで、日常業務にAIを活かせる人材を育てます。

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お問い合わせ先

株式会社アップオンコンサルティング

メール
info@up-on.jp

電話
090-9765-7787
西尾まで

HP
https://up-on.jp

製造業のAI導入、社員向けAI講座、経営者向けAI講座、AI講師・コンサルタント向け講座をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

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