1 同じ言い方で頼んだのに、返ってくる答えが違う
「昨日と同じ書き方で指示を出したのに、今日は全然違う動きをする」。Claude Codeを使っていると、こう感じる瞬間があります。
指示文をコピーして貼り付けているのに、フォルダを移しただけで挙動が変わる。同僚のパソコンでは思った通りに動くのに、自分のパソコンでは動かない。こうした場面では、AIの気まぐれのように見えてしまいますが、調べていくと、原因はAIの気分ではなく、指示を置く場所にありました。
Claude Codeは、作業を始める前に、いくつかの場所から情報を集めて読み込んでいます。どこに何を置くかで、AIが受け取る前提が変わる。だから同じ言葉で頼んでも、結果が変わって見えるのです。
この記事では、なぜそうなるのか、どこに何を置けば安定するのか、そして実際につまずきやすい落とし穴を、手を動かせる形で書きます。

2 なぜAIに「前提」を渡す仕組みがあるのか
そもそも、なぜこんな仕組みが必要なのでしょうか。
人に仕事を頼むときも、毎回すべてを説明していたら疲れます。「うちのチームは、報告は結論から書く」「このプロジェクトでは、この言い方は使わない」。こうした前提を最初に共有しておけば、あとは本題だけ伝えればよくなります。
Claude Codeにも同じ発想があります。毎回の指示文に、口調や禁止事項や作業の進め方を書き直すのは手間です。そこで、前提として先に渡しておく場所が用意されています。それが CLAUDE.md というファイルです。
このファイルは、記事の書き方のルールや、チームの役割分担をまとめたルールブックとして使えます。このファイルに文体のルールや禁止語のリストを書いておくことで、毎回同じ注文を打ち直さずに済むようになります。
ここまでは基本の話です。今回書きたいのは、このファイルを「どこに置くか」で、効き方が変わるという点です。
3 CLAUDE.mdは4つの場所に置ける。読まれる順番も決まっている
CLAUDE.mdは、置ける場所が4種類あります。
まず、会社全体で使う組織管理用の場所。次に、自分のパソコン全体に効かせるユーザー用の場所。そして、いま開いている案件のフォルダに置くプロジェクト用の場所。最後に、自分だけのメモとして残すローカル用の場所です。
これらは上書きされるのではなく、広い範囲から狭い範囲へと、順番に読み込まれて重なっていきます。まず自分全体のルールが読まれ、そのあとに案件ごとのルールが足されていく、というイメージです。

ここで大事なのは、CLAUDE.mdは「守らせる命令」ではなく「読ませる文脈」として扱われているという点です。公式のドキュメントにも、具体的で簡潔な指示ほど守られやすいと書かれています。長く書けば書くほど確実になる、というものではありません。1つのファイルは200行より短くまとめるのが目安とされています。長くなりすぎると、AIが読む文脈を圧迫し、かえって守られにくくなるためです。
つまり、あれもこれも詰め込んだ長いCLAUDE.mdより、案件ごとに要点だけ絞ったCLAUDE.mdのほうが、実際には効きやすいということになります。
4 案件のフォルダに置く。それだけで前提が変わる
ここからは、実際に手を動かす手順です。
まず、自分がいつも作業しているフォルダを思い浮かべてください。そのフォルダの直下に、CLAUDE.mdという名前のファイルを1つ作ります。中身は、次のような形で構いません。
このプロジェクトでは、次のルールを守ってください。
- 回答は結論から書く。
- 一文は40字から60字を目安に区切る。
- 「絶対」「必ず」という言葉は使わない。
- コードを直すときは、直す前と直した理由を1行で添える。
このファイルを置くだけで、そのフォルダの中で作業するときは、Claude Codeが起動のたびにこの内容を読み込みます。CLAUDE.mdは、作業しているフォルダと、その上にあるすべてのフォルダから、起動時に読み込まれる仕組みになっています。
ここが、冒頭の「同じ指示なのに結果が違う」の正体です。あるフォルダにはCLAUDE.mdがあり、別のフォルダには無い。あるいは、上の階層のフォルダにだけルールが置いてあり、いま開いているフォルダはその外にある。それだけで、AIが受け取る前提がまるごと変わってしまうのです。

5 失敗しやすい場面。フォルダを移しただけで指示が消える
実際につまずきやすいのが、案件をまたいで作業しているときです。
たとえば、A社の案件フォルダにCLAUDE.mdを置いて、口調のルールや禁止語を丁寧に書き込んだとします。その中でしばらく作業し、狙い通りの答えが返ってくるようになった。
ところが、B社の案件に取りかかるために、別のフォルダを開いた瞬間、そのルールはすべて消えます。CLAUDE.mdはフォルダごとに紐づいているため、B社のフォルダにルールを書いていなければ、A社で積み上げてきた前提はいっさい引き継がれません。
これを知らずに「さっきまで言うことを聞いていたのに、今日は全然違う」と感じてしまうと、AIの調子が悪いのだと誤解しがちです。実際には、単に読んでいる前提が違うだけです。
もう1つよくあるのが、サブフォルダの中に置いたCLAUDE.mdです。案件フォルダの中に、資料用の小さなフォルダを作り、そこにだけルールを書いても、Claude Codeが最初からそのルールを読んでいるとは限りません。サブディレクトリのCLAUDE.mdは、そのフォルダの中のファイルに実際に触れたタイミングで、必要になってから読み込まれる仕組みだからです。作業の最初から効いているとは考えないほうが安全です。
6 役割分担の仕組み、Auto memoryとの違い
CLAUDE.mdのほかに、もう1つ知っておきたい仕組みがあります。Auto memory、日本語で言えば自動メモリです。
これは、Claude自身が作業の中で気づいたことや学んだことを、自分で書き残していく仕組みです。保存先は自分のパソコンの中の決まった場所にあり、索引となるファイルと、話題ごとの個別ファイルで構成されています。
CLAUDE.mdとAuto memoryは、役割が違います。CLAUDE.mdは人間が書く指示やルールです。Auto memoryは、Claudeが自分で書く気づきや学習の記録です。前者は「こう動いてほしい」という注文であり、後者は「以前こうだったので、こう覚えておこう」という記録に近いものです。
ここで注意したいのは、この索引ファイルにも読み込みの範囲があるということです。毎回のセッションの最初に、先頭から一定の分量までしか読み込まれません。分量を超えた部分は、その回は読まれないままになります。つまり、ここに何でも書き足していけば無限に覚えてくれる、というものではありません。大事なことほど、先頭に近い位置に整理しておく必要があります。
使い分けとしては、変わらないルールや口調、禁止事項はCLAUDE.mdに書き、状況によって変わる気づきや、過去のやり取りで指摘された点はAuto memory側に任せる、という整理がしやすくなります。
7 もう1つの落とし穴、agentsとskillsで優先順位の向きが逆
Claude Codeには、CLAUDE.md以外にも、細かい役割を持たせる仕組みがあります。その代表がagentsとskillsです。
agentsは、特定の役割を担わせる設定です。skillsは、特定の作業手順を覚えさせる設定です。どちらも、自分のパソコン全体に効かせる場所と、いまの案件だけに効かせる場所の、両方に置くことができます。
ここに、覚えておくべき注意点があります。agentsは、案件フォルダに置いたものが、自分のパソコン全体の設定より優先されます。同じ名前の設定が両方にある場合は、いま開いている案件に近いほうが使われます。
ところが、skillsはこの向きが逆です。自分のパソコン全体に置いた設定のほうが、案件フォルダに置いた設定より優先されます。
同じ「案件フォルダに置くか、全体に置くか」という選択なのに、agentsとskillsでは優先される側が逆になっている。これは実際に触ってみないと気づきにくい点です。案件ごとに動きを変えたいつもりでskillsを案件フォルダに置いても、自分の全体設定のほうが優先されてしまい、狙った通りに切り替わらない、ということが起こり得ます。
前提として、案件ごとに何かを上書きしたい場合は、agentsとskillsで置く場所の考え方を変える必要がある、と覚えておくと迷いにくくなります。
8 3つの場所を1つの手順として使う
ここまでの内容を、実際の作業の流れとしてまとめます。
まず、案件を始める前に、その案件のフォルダにCLAUDE.mdを作ります。ここには、口調や禁止語、作業の進め方など、変わらないルールを短くまとめます。
次に、作業の途中でClaudeが気づいたことは、Auto memory側に任せます。無理に自分で書き足そうとせず、記録として積み上がっていくのを見守る形で構いません。ただし、索引ファイルが長くなりすぎていないか、時々目を通しておくと安心です。
最後に、特定の役割や作業手順を切り替えたいときは、agentsとskillsのどちらを使っているかを意識します。agentsは案件側が勝ち、skillsは全体側が勝つ。この向きを頭の片隅に置いておくだけで、思った通りに切り替わらないときの原因を探しやすくなります。
この3つを組み合わせておくと、案件をまたいでも、指示が消えたり、意図と逆の設定が優先されたりする場面を減らせます。
9 まとめ
同じ指示を出しているつもりでも、AIが受け取っている前提はフォルダごとに違います。CLAUDE.mdは、広い範囲から狭い範囲へと重なって読み込まれ、案件のフォルダに置いたものが、その案件での前提になります。
Auto memoryは、Claudeが自分で書き残す気づきの記録であり、CLAUDE.mdとは役割が違います。そしてagentsとskillsは、優先される場所の向きが逆になっている点に注意が必要です。
ここまでが、1人で設定できる範囲です。実際の業務に合わせて、案件ごとにどこまでルールを分けるかを設計するところは、全6回・1回2時間のオンライン講座で一緒に進めています。(プロフィールからどうぞ)
※2026年9月7日現在の情報です。

