企画会議で「誰の意見を聞くか」と聞かれれば、たいていの人は上司や同僚の顔を思い浮かべます。しかし2023年から2024年にかけて、サントリー・伊藤園・日清食品・サイバーエージェントの4社は、この問いに対して「AI」という答えを加えました。裏話として流れてきた話ではなく、各社が自社の公式サイトで正式に公表している事実です。
この記事で取り上げるのは、公式発表にもとづいて裏取りできる4つの事例だけです。単に出来事を紹介するのではなく、「自分の会社なら、どこから真似できるか」まで一緒に考えます。同じメンバーで企画会議を長く続けてきた会社ほど、読み終わったときに手を動かしたくなる内容です。
1 なぜ今、有名企業がAIを会議に入れているのか
最初に結論を言っておきます。AIは「人間に代わって考える」道具ではありません。「人間だけでは出てこない角度を、1つ増やす」ための道具として、すでに有名企業の商品開発や広告づくりの現場に取り入れられています。
企画会議のメンバーが変わらないまま続くと、出てくる案も自然と似通っていきます。これは企画力が落ちたということではなく、「新しい視点を持つ人」が単純にその場にいないだけ、というケースが大半です。4社の事例はそれぞれ使い方が異なりますが、共通しているのは「人手が足りないところを、AIに補ってもらっている」点です。足りていないのは、発想の広がりだったり、実写では撮れない表現だったり、声を読み取る人手だったり、コピーを書く手数だったりします。

2 サントリー、ChatGPTを「AI部長」として会議に入れた
サントリーは2023年6月、清涼飲料「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」のWeb CMを制作する際、ChatGPTに企画の相談をしながら作業を進めました。サントリーにとって、ChatGPTを使った初めてのCMです。
注目すべきは、AIが絵を描いたかどうかではありません。普段の企画会議に存在しない立場を、わざわざ1人分増やしたという点です。ChatGPTは文章を整える役回りではなく、「AI部長」という肩書きで企画立案そのものに関わりました。声優として白井悠介さんを起用する案も、ChatGPTからの提案がもとになっています。配役という人選の部分までAIに相談していたことこそ、この事例の重みです。
完成したCMの中身は、白井さんがバレエダンサーのように高速回転する場面、キウイフルーツが降ってくる場面、巨大な「やさしい麦茶」の上でスプリットジャンプする場面、ドーナツに乗って旅に出る場面と、人間だけの会議からは生まれにくかったであろう展開になりました。
普段の企画会議に、AIという「あえて違う意見を言う係」を1人加えると、人間だけでは出なかった発想が混ざり込みます。この考え方は、広告代理店を使わない中小企業でもそのまま使えます。試すなら、次の企画会議の前に、ChatGPTへ一度だけ「この企画について、違う角度の意見はありますか」と尋ねてみてください。出てきた案を採用する必要はありません。人間だけで固まってしまった発想に、別の角度を1つ混ぜることが目的です。

3 伊藤園、CMに映っているのは実在しない人物
伊藤園は2023年9月、「お〜いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMで、AIが生成した「AIタレント」を起用しました。調査の結果として「日本で初めて」と公表されている取り組みです。CMのテーマは「現在の自分」と「約30年後の未来の自分」であり、この2人が別人に見えないよう、しかも自然に年を重ねた表現にするための手段として、AIタレントが選ばれています。
ここで大事なのは、AIだから費用が安いという話ではありません。「同じ1人が、30年後も同じ顔立ちのまま年を取る」という、実在の俳優では撮り直しが難しい表現を、AIなら実現できたという点です。先に表現したい内容があって、その解決策としてAIが選ばれています。「日本で初めて」と公表している姿勢も含め、新しい手法を隠さず前に出しているところが、この事例の読みどころです。
伊藤園は同じ製品のパッケージデザインにも、生成AIを取り入れています。「茶葉の生命力を最大限に引き出す」というコンセプトのもと、生成AIが作った画像を参考にしながら、最終的にはデザイナーが描き直して完成させたと公表されています。AIの出力をそのまま採用せず、人の手で描き直す工程を残している点は、次の事例とも共通する大事なところです。
自分の会社に当てはめるなら、「今の写真しかないが、入社当時の若い姿も見せたい」「商品を長く使い続けた先の姿を見せたい」というような、実写では撮れない場面を補う目的でAIを活用する応用が考えられます。AIを使うことそのものを目的にせず、撮れない場面を埋める道具として位置づけること。これが、この事例から持ち帰れる学びです。

4 日清食品、53年の歴史で初めて気づいたこと
日清食品は「カップヌードル」について、おいしいと感じた瞬間や思い出を尋ねる大規模なアンケートを実施しました。対象は15歳から89歳までの男女1,640名で、集まったエピソードは1,560件にのぼります。この件数を1件ずつ人の手で読み、傾向をまとめようとすれば、担当者が何日かけても終わらない作業量です。
このエピソード群を生成AIで分析した結果、「家族や友人との思い出」が18パーセントで全カテゴリー中1位になりました。「カップヌードルは1人で食べるよりも、誰かと一緒に食べられることが多い」という、53年の歴史の中で初めて見えてきた傾向です。長く売れ続けている商品であっても、顧客の声をまとめて読む作業そのものを誰もやっていなかったために、見過ごされていた事実があったということになります。
この分析結果を受けて、実際に寄せられたエピソードの中から100種類を選び、そのままパッケージにデザインした限定商品「カップヌードル カプヌのエモい出パッケージ」が、希望小売価格236円で2024年9月16日に全国発売されました。アンケートを集めるだけに終わらせず、そこで得た気づきを商品そのものに反映させたところまでが、この事例の完成形です。
実はこの分析、今日からあなたの会社でも試せます。自社に届いたお客様の声や問い合わせの履歴、アンケートの自由回答があれば、それをまとめてChatGPTに読ませるだけです。次の依頼文は、そのままコピーして使ってください。
「以下は、当社の商品・サービスについて寄せられたお客様の声です。これらを読んで、頻出するテーマを5つ以内に分類してください。それぞれのテーマについて、件数の目安と、代表的な意見を1〜2件引用してください。意外だった傾向があれば、最後にまとめて教えてください。(ここにお客様の声を貼る)」
貼る声は10件でも100件でも構いません。少ない件数でも、担当者が流し読みで済ませていた声を分類し直すだけで、見落としていた傾向に気づくことがあります。日清食品が1,560件で行ったことを、まずは手元にある分だけ試してみることが、今日からできる一歩です。

5 サイバーエージェント、広告のコピーをAIに何パターンも作らせる
サイバーエージェントは2023年、広告効果予測サービス「極予測AI」に、自社開発の大規模言語モデルとOpenAIのChatGPT(API)を組み合わせた、広告コピー自動生成機能を搭載しました。「20代女性」といった性別・年代の指定だけでなく、「朝が忙しい働く人」のような状態や特性までふまえ、配信ターゲットに合わせた広告コピーを自動で作成できます。
生成したコピーをそのまま使うのではなく、改めて効果予測にかけることで、これまでより多くのクリエイティブ案を検証できるようになりました。その結果、AIの予測値が既存1位のクリエイティブを上回る新しい案を提案できるようになっています。ここでAIが担っているのは「良いコピーを1本当てる」役目ではなく、「試せるコピーの本数を増やす」役目です。人が1日に書けるコピーの数には限りがありますが、AIなら量を増やせます。量が増えれば、その中から効果予測で選び取るという、人の判断を活かした仕組みが成立します。
広告の反応は、実際に配信してみるまで分かりません。だからこそ、1本に案を絞り込まず、複数の案を並行して試すという考え方自体が、中小企業の広告づくりにそのまま使えます。自社の広告・チラシ・LINE配信文でも、同じ発想が通用します。1本だけ書いて終わらせず、「忙しい朝の会社員向け」「子育て中の人向け」のように対象を変えた案をAIに複数出させ、実際に配信して反応を比べてみてください。これが、サイバーエージェントの事例を小さくした形です。
6 AIをうまく使うための線引き
4社の事例を読んで「企画そのものをAIに丸投げすればいい」と考えると、ここでつまずきます。サントリーもAIの提案をそのまま採用したわけではなく、人が選び直しています。日清食品も、分析結果を商品へ落とし込む判断は人が行っています。AIが出すのは「材料」であり、「決定」ではありません。商標や肖像権といった契約・法律にかかわる最終判断は、別の話として人が担う必要があります。
もう一つ気をつけたいのは、公式に裏取りできない話を混ぜ込まないことです。この記事で取り上げた数値や経緯は、どれも各社の公式発表に書かれている内容に限っています。ニュースサイトのまとめ記事や感想記事で見かける「らしい」という伝聞情報は、自社の資料として使える情報とは扱わないでください。社内で説明するときも、「公式発表によれば」と出典をはっきり言える範囲にとどめることが、安全に使うための条件です。
4社に共通しているのは、AIを「人手が足りない部分の埋め合わせ」として使っていることです。企画のアイデアが足りない、実写で撮れない場面がある、声を読む人手が足りない、コピーを何本も書く手が足りない。どれも目新しい技術の話ではなく、現場で実際に困っていたことへの対処にすぎません。
7 今日から始める一歩
まずは、自分の会社で足りていない手が何かを、1つだけ決めてください。候補はおそらく次の4つのいずれかに近いはずです。企画の発想が足りない、見せたい場面を撮れない、顧客の声を読む時間が足りない、広告やチラシの文章を何本も作る手が足りない。
決まったら、今日はその1つだけをAIに相談してみてください。サントリーの事例のように「違う角度の意見はありますか」と聞くだけでも構いませんし、日清食品の事例のように、手元にあるお客様の声をそのままChatGPTに読ませてみるだけでも構いません。採用するかどうかは、いつものとおり人が決めれば十分です。今日はAIに意見を求めるところまでで構いません。
今回紹介した企業ごとの元の発表資料へのリンクを、以下にまとめて掲載します。気になる事例があれば、公式発表そのものも合わせて確認してみてください。
・サントリー「やさしい麦茶」AI部長のCM:https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1383.html
・伊藤園「お〜いお茶 カテキン緑茶」AIタレント起用:https://www.itoen.co.jp/news/article/64855/
・日清食品「カップヌードル カプヌのエモい出パッケージ」:https://www.nissin.com/jp/assets/news/20240909/20240909.pdf
・サイバーエージェント「極予測AI」広告コピー自動生成:https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=28828
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初めまして、AI先生2.0こと西尾です。
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これは、35年前のインターネット革命を思い出していただければわかると思います。
今、インターネット革命を超える「AI革命」を商機と捉え、一緒に会社を飛躍するお手伝いをします。
今がその時、その時が今です。
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