月末に届く請求メールを見て、小さくため息をつくことはないでしょうか。ChatGPT、Claude、Gemini。どれも仕事に欠かせないツールになっているのに、月額の合計を見ると気が重くなります。1人分なら数千円で済んでも、社内で複数人が使うようになれば、1年を通せば決して小さくない金額です。
この記事では、その月額費用の一部を、国の補助金で負担してもらえる可能性がある、という話を取り上げます。公式サイトを実際に確認したうえで、何が事実で何がまだ確認できていないかを分けて説明します。読んでいただきたいのは、中小企業の担当者だけではありません。個人事業主として生成AIを使っている方にも関係のある話です。
1 「デジタル化・AI導入補助金2026」とは何か
先に結論を言います。「デジタル化・AI導入補助金2026」という国の補助金を使うと、ChatGPTやClaudeのようなAIツールの利用料の一部を、国に負担してもらえる可能性があります。
この制度は、以前「IT導入補助金」と呼ばれていた仕組みが、名前を変えて続いているものです。所管は中小企業庁で、採択を行うのは独立行政法人中小企業基盤整備機構です。実際の事務局の運営は、TOPPAN株式会社が担っています。
対象になるのは中小企業や小規模事業者で、ここには個人事業主も含まれます。公式サイトにある「申請対象者チェッカー」という診断ツールを開くと、組織の形態を選ぶ欄に「個人事業主、その他法人」という選択肢がはっきり用意されています。業種別の対象表にも「個人事業を含む」と明記されています。
補助率は1/2以内です。つまり、払った費用のうち最大で半分までを国が負担してくれる計算になります。
ただし、一定の賃上げ要件を満たす場合は、補助率が2/3以内まで上がります。その要件は、令和6年10月から令和7年9月までの間に3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が、全従業員の30パーセント以上いることです。この条件に当たるかどうかは会社によって異なるため、申請前に自社の状況を確認してください。
補助額は、申請する内容の規模によって変わります。小さい規模(1プロセス以上)であれば5万円以上150万円未満、大きい規模(4プロセス以上)であれば150万円以上450万円以下です。「プロセス」というのは申請書に書く計画の大きさを指す言葉で、ChatGPTの月額費用だけを目的にするなら、小さい規模で十分です。規模が大きくなるほど、申請書に記載する業務プロセスの数も、審査に提出する資料の量も増えます。ただし、小さい規模の枠にも5万円以上という下限があります。見積もり額がこの下限に届くかどうかは契約内容によって変わるため、事業者に問い合わせる際に確認してください。
対象になる経費は、ソフトウェアの購入費だけではありません。クラウド利用料も含まれており、これは公式サイトの原文にそのまま書かれている表記です。最大2年分が対象になります。ChatGPTやClaudeのような月額のサブスクリプションは、まさにこの「クラウド利用料」に当たります。つまり、今まさに払っている月額費用そのものが、この補助金の対象経費になり得るということです。
2 なぜ、今の契約をそのまま補助金に当てはめられないのか
ここは、この制度でいちばん誤解されやすい部分です。先にお伝えしておきます。自分で直接契約しているChatGPTやClaudeの契約を、そのまま補助金の対象に切り替えることはできません。
この補助金は、自分で直接契約したサービスに、後から補助金を当てはめるような仕組みではありません。国に登録された「IT導入支援事業者」(補助金の申請を一緒に進めてくれる、国の審査を通った会社)が、あらかじめ登録してある「ITツール」(その事業者が国に申請し、事前に認めてもらっている商品)の中から選んで申請する必要があります。ここに名前が載っていないツールは、そのままでは申請の対象になりません。
いま個人でChatGPT Plusを契約している方は、登録されたIT導入支援事業者を通じて、登録されたツールを新たに契約し直す形になります。どのIT導入支援事業者を選ぶかによって、同じAIツールでも実際にかかる費用や、申請の進めやすさが変わってきます。次の章では、実際にどう確認したのかをお伝えします。

3 実際に公式サイトで検索してみた
まずは、自分が対象者に当たるかどうかの確認です。デジタル化・AI導入補助金2026の公式サイトに、対象者を確認できる案内があります。
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/
トップページには「申請対象者チェッカー」という診断の仕組みがあり、組織の形態を選ぶ欄に「個人事業主、その他法人」という選択肢がはっきりと出てきます。中小企業の規模や業種によって細かい条件が分かれているので、自分の会社、自分の事業が当てはまるかを、ここで確認しておきましょう。
続いて、公式サイトの「ITツール・IT導入支援事業者検索」で、使っているツールの名前を実際に検索してみます。「ChatGPT」で検索したところ、実際に83件のツールがヒットしました。検索結果の一覧には、ツール名、提供するIT導入支援事業者の名前、価格が並んで表示されます。ChatGPT Plus、Pro、Business、Goが、それぞれ複数のIT導入支援事業者から登録されていることが、実際の検索結果で確認できました。
ClaudeやGeminiが登録されているかどうかは、ツールによって違います。思い込みで判断せず、自分が使っているサービス名で同じように検索し、自分の目で確かめることをおすすめします。
検索でヒットしたら、契約の前にその事業者へ問い合わせてください。同じChatGPT Plusでも事業者ごとに価格が大きく異なることが分かっているので、最初に見つけた1社だけで決めず、ヒットした複数の事業者へ同時に問い合わせるのがよい進め方です。見積もりとスケジュールを確認してから、次の一歩を決めてください。

そのまま使える問い合わせの文面を、下に用意しました。ご自身が使っているツール名の部分だけ書き替えてお使いください。
件名 デジタル化・AI導入補助金2026についての相談
本文
デジタル化・AI導入補助金2026の利用を検討しています。現在、ChatGPT(自分が使っているツール名に書き替える)を、個人事業主として、または法人として利用していますが、貴社経由で補助金の対象として申請することは可能でしょうか。対象になる場合の、申請を含めた見積もり金額と、交付決定までのスケジュールを教えてください。また、見積もりの内訳(ツールの利用料と、導入支援・コンサルティング費用の別)も併せて教えてください。
4 つまずきやすい点
今回いちばん注意していただきたいのはここです。公式のツール検索でChatGPTを探すと、同じChatGPT Plusでも事業者によって価格が違います。実際の検索結果では、Plusが32,727円から38,400円という価格で登録されている事業者がありました。ChatGPT Proは191,748円から383,496円、ChatGPT Businessは36,600円から73,200円という例もありました。
ここで気をつけていただきたいのは、この価格が「1か月分」なのか「1年分」なのかが、公式サイトの検索結果だけでは判断できないことです。登録ツールの価格欄には「標準価格」としか書かれておらず、契約期間の単位が明記されていません。ChatGPT Plusを公式サイトで直接契約すると、月額はおよそ20ドル、日本円で3,000円前後ですが、この数字とそのまま並べて「高い」「安い」を比べることはできません。登録ツールの価格には、ツール自体の利用料に加えて、IT導入支援事業者の導入サポート費用などが含まれている場合があります。「補助金を使えば半額になる」というのは、この登録商品の価格を基準にした話であって、いま払っている月額料金そのものが半額になるとは限らない点に注意してください。
見積もりを取る際は、次の2点を事業者に確認してください。1つ目は、その価格が月額なのか年額なのか、契約期間の単位です。2つ目は、その価格にツールの利用料以外の費用(導入支援・コンサルティングなど)がどこまで含まれているかです。この2点を確認せずに「安い」「高い」と判断すると、後になって思っていた金額と違う、ということが起こります。
契約期間と内訳が分かったら、自分で直接契約した場合の金額と、見積もりの金額を、同じ期間に揃えて比べてください。補助率は1/2以内、条件を満たせば2/3以内ですが、もとの価格によっては直接契約のほうが安いこともあります。「補助金が出るから得」と決めつけず、自分の目で見比べたうえで判断してください。
もう1つ、注意しておきたい点があります。交付決定より前に契約や支払いを済ませてしまうと、補助金の対象から外れやすいというのが、この種の補助金に共通する一般的な原則です(公式ページの本文で直接確認できたわけではありません)。今の契約を急いで切り替えると、タイミングを誤って対象外になってしまう恐れがあります。見積もりとスケジュールを確認したうえで、契約のタイミングを決めてください。

5 申請して終わりではない
今回の6次締切は2026年10月30日の17時で、交付決定は2026年12月10日の予定です。事業の実施期間は、交付決定から2027年5月31日の予定までとされています。申請してすぐに使えるわけではないので、年内に動くつもりがある方は、今日のうちに対象者の確認とツール検索を試しておくことをおすすめします。検索した結果、自分の使っているツールが登録されていなければ、今回は見送るという判断も立てられます。
申請したからといって、採択されると決まっているわけではありません。審査があり、通過しないケースもある前提で、スケジュールを組んでください。早めに動き出しても、費用の一部が実際に戻ってくるのは年末以降になる見込みです。この時間の流れも頭に入れておくとよいでしょう。
対象になるかどうか、補助率がどちらに当たるかは、ご自身の事業の状況によって変わります。個別の申請については、問い合わせたIT導入支援事業者、または公式サイトの窓口で確認してください。

6 今日やるべき3つのこと
1つ目は、公式サイトの「申請対象者チェッカー」を開き、自分が対象者に該当するかを確かめることです。個人事業主も対象に入っているため、法人でない方にも確認する意味があります。
2つ目は、公式サイトの「ITツール・IT導入支援事業者検索」で、自分が使っているサービス名を実際に検索することです。ChatGPTは既に83件が登録されています。ClaudeやGeminiを使っている方は、同じように自分の目で検索して確認してください。
3つ目は、検索でヒットした複数のIT導入支援事業者に、この記事の問い合わせ文をそのまま使って問い合わせることです。見積もりの単位(月額か年額か)と内訳を確認し、自分で直接契約した場合の金額と比べたうえで、次の判断をしてください。
毎月払っている月額費用が、少しでも軽くなるかもしれない。そう思えたなら、まずは検索だけでも一度試してみる価値があります。
※2026年10月3日現在の情報です。
ここまでが、1人で設定できる範囲です。
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